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■ 真様小説02 ■

2009.04.20 01:17 candy

「白雪姫」


「起きろ」
何だよ…まだ眠っていたいのに。いやいやながら目を開けた僕の目の前には、ピエールの顔があり、僕は驚く。
「な、なにっ?」
息がかかりそうな程近くで、ピエールの目が見開かれる。
「ミサキ…どうしてもフランスに来る気はないか?」
ピエールの腕は僕の肩を地面に押し付けた。草の臭いに僕が顔を背ける。
「やめてよ、僕これからワールドユース大会の予選に…」
何が何だか訳が分からない。やっと声を振り絞った僕だったが、ピエールは左腕で僕の手首を押さえつけた。
「ミサキ、愛しているんだ」
ピエールはそう言いながら、動けないでいる僕の頬を触った。
「な…に?」
口元に笑みを刷いたピエールはそのまま僕のあごを掴んで持ち上げた。
「フランスに来ないと言うのなら、せめて…」
「やっ、やだ」
紳士的に、でもいやおうなしに唇を、何度も重ねられる。舌を絡められる未知の感触に、思ったよりも柔らかい唇に、僕は自然に涙が浮かんでくるのを感じた。
「君のためなんだ。フランスに残ってくれないか?」
今更諭されても、心は動かない。恐怖や動揺が勝って耳に入らない台詞を、僕は首を振って否定する。しかし、その抗議は受け入れられなかった。
「それなら、力づくで…」
「いやだっ」


僕をおさえつけたピエールは、僕を抱き締めたまま、シャツをめくり上げた。ユニフォームの下には当然何も着ていない。お腹から胸元に上がってくる手が恐ろしくて、僕は声を出すことすらできなかった。
「きれいな肌だな、ミサキ」
一方的な行為なのに、僕を押さえつけるピエールは、切ない目をしていた。何度も何度も重ねられる深いキスに、僕まで苦しくなる気がした。
「やめてよ、ピエール…」
何とか絞り出した声で、哀願した。ピエールは、僕にとって大切なライバルであり、敵味方に分かれていても、大切な友人だった。その関係を、壊してほしくはなかった。
「ミサキ…」

その時だった。遠くから、怒声が聞こえた。
「ピエール!何だこの書置きは!愛の狩人って何なんだ!これ以上最悪なこと言いやがったら承知しねえぞ」
聞き覚えのある声に、顔を上げた。ナポレオンだ。
「ナポレオン、助けて」
ピエールがそちらを向いている隙に、と声を上げた。ナポレオンはこちらを見ると、何故かにやにやと笑った。
「そうか、岬を引き止めてるんだな。何なら、俺も手伝おうか?」
冗談じゃない。ピエール一人でも苦戦しているのに、ナポレオンまで加勢されたら。
よく分からなかったけれど、この機会を見逃す訳にはいかなかった。僕は、さっと身を起こすと、ナポレオンに気を取られているピエールに体当たりをした。ピエールがひるんだ隙に、身を翻して走り出す。
「待てっ!」
何だか訳が分からない。ここはどこなのかも。でも、とにかくピエールから離れようと思った。悪いとは思ったけれど、渾身の力で当たったから、当分は追って来られないだろう。身体に残る感触に顔を歪めながら、僕は逃げた。

しばらく走ると、可愛らしい青い屋根の家があった。「南葛他ハウス」適当すぎる名前の看板に、何となく住人が読めた気がして、僕は安心して中に入った。
「岬くん!」
「岬!」
中にはやはり、翼くんに松山、井沢がいて、あと葵に新田に佐野、タケシが全日本ユニフォームで出迎えてくれ、僕に駆け寄って来た。
「どうしたんだ、岬、顔色が悪いぞ」
松山が僕の肩を抱く。
「うん、大丈夫」
優しい松山の声に安心して、僕は松山の肩にもたれた。松山の心配性は時々困るくらいだけれど、今はありがたい気持ちだけが先行する。…こうして落ち着いてみると、恐かったのだと気付く。
「ずるいぞ、松山ばっかり岬くんを独占して」
「そうだぜ、岬は南葛のエースなんだぜ」
「そうですよ、岬さんを返して下さいよ」
何だか、雲行きが怪しい。佐野とタケシを見ると、やっぱり、傍観者を決め込んでいる。先輩が先輩なので、スルーも駆け引きもめっぽううまい二人に、それでも腹が立った。空気の読めない葵に至っては、僕がスルーしたい。
「岬くーん」
彼女持ちとは思えぬような調子で、翼くんが抱きついてくる。力の差も歴然としているのに、しっかりと抱き締められては、逃げられない。
「松山、井沢、助けてよ」
つい、近くにいる顔に助けを求めた。この二人なら安心だろう、と思った僕が甘かった。
「そうだよな、岬は俺の方が良いんだもんな」
「いや、俺だろ?誰より長くコンビ組んでたんだぜ」
僕の思惑は外れ、更に災いを呼び込んだらしい。最初は抱きついてくる、だったのが、だんだんと髪や肩に伸びる手に、僕はため息をついた。この世界は、どうもおかしい。あの生真面目の象徴の松山や賢い井沢がこんなことをしてくる訳はない。

ため息をついたときだった。


「こんにちは」
戸口を開けて入って来たのは、魔女の格好をした、どう見ても三杉くんだった。そこで、僕は気付く。愛の狩人ピエール、南葛他ハウスの7人、そして、魔女。白雪姫だ!
「僕、リンゴはいらないよ」
リンゴをかごに入れている三杉くんに言い放つと、僕は周囲に張り付いている三人を引き剥がして、椅子に座った。
「ううん、今日は胸紐を」
胸紐、だって暗殺アイテムなのはちゃんと知ってます。いらない、と言いかけた僕を制して、小人達が三杉くんにわらわらと群がる。
「是非、売ってよ、三杉くん」
何だか、怖い。タケシと佐野に口止めして、開いたままの出口から出ようとした僕だったが、敵もそう甘くはなかった。
「岬くん、逃がさないよ」
翼くんの目が光ったかと思うと、僕は壁に押し付けられた。その僕の手に、足に、紐がかけられる。
「胸紐、じゃないの?」
「胸も当然縛ってあげる」
「やだっ、ちょっと、どこ触ってるんだよっ」
抗議も受け入れてはもらえないらしい。壁にくくられながら、僕は三杉くんを見た。三杉くんはいつも、事態から少し離れたところで俯瞰している人だから、きっと何かを知っているはずだった。
「三杉くん、説明してよっ」
「ん?知りたい?」
三杉くんの微笑みを見てしまった僕は、とても後悔した。…目が笑っていない。
「君さえいなかったら、翼くんのパートナーのポジションは僕のもの。だから、ちょっとばかり、世界に細工をさせてもらったよ」
「…世界に細工できるんだったら、翼くんのパートナーの名前を書き換えたら良いのに」
葛藤や懊悩も問いかけも無視されて、壁にくくりつけられてしまった僕に、三杉くんが手を伸ばす。
「だから、ピエールにフランスにとどめるように言ったのに…彼は君を口説くのを優先にしたみたいだからね」
三杉くんの話を聞いて、頭がくらくらした。全然、分からない。大体この実行犯に翼くんが入っていたら、意味がないんじゃないかな。でも…。
僕は、友達に変なことをしてほしくない。たとえ、操られていたとしても、みんな僕を傷つけたことを思い出したら、すごく悲しくなるような優しい友達だ。だから。
「岬くん、何を」
最後の力を振り絞った僕は、三杉くんの持っていたリンゴにかじりついた。この世界がどういう設定かは分からないが、大きく狂わすことができるはずだった。


「ん…」
息が苦しくて、目が覚めた。とても変な夢を見た気がする。確か、三杉くんが変なことを言っていて…。
でも、目を開けてみると、どうやらその世界のままだったらしい。すごく大きなベッドに、僕は寝かされていた。
「岬、気が付いたか?」
僕の枕元でにこやかに微笑んでいるのは若林くんだった。いつものキャップにいつものユニフォーム。
そして、いつもの眼差し。強い光を湛えた目からは考えられない程優しい眼差しは、いつも僕を落ち着かなくさせる。
「若林くん」
ほっとしたせいか、油断すると涙が出てしまいそうだ。でも、安心も油断も禁物だと、僕は僕はゆっくりと身を起こし、周囲を伺った。そして、絶句した。あの、僕、衣装まで白雪姫なんですが。それに、あの息苦しさって…。白雪姫が目覚めるきっかけを思い出して、僕は沈黙してしまった。

そして、若林くんと目が合った。まさか、あなたはまともですか?とも聞けずに、視線を逸らせずにいると、若林くんは僕を見下ろし、急にベッドの上に手をついた。
「何する…の」
さっきまでの恐怖が蘇る。思わず身を固くした僕の頭に、若林くんの手が伸びた。
「大変だったみたいだな」
そう言って笑う若林くんを見た途端、ふっと力が抜ける。そっと頭を撫でてくれる手は、大きくて温かい。
「三杉のことなら安心しろ。日向と若島津がお前の棺を埋めに行くのを買収して来たから、大丈夫だぜ」
はあ。小次郎はこの世界でも、お金に困っているのか。どうでもいいことを考えてしまった僕に、若林くんは事情を説明してくれた。

毒りんごをかじった僕を、三杉はガラスの柩に入れて不法投棄しようとしたらしい。足がつかないように、わざわざこの衣装で、東邦の二人に依頼する辺り、確信犯だ。
「お前を探していた」
若林くんの手が肩に触れた瞬間、僕は一瞬顔が強張るのを感じた。でも、大きな手は優しくて、本当に安心できた。でも、三杉くんは世界に細工をした、なんて言ってたような…。
見上げた僕の不安はすぐに伝わってしまったらしい。若林くんは笑いながら、僕の髪をくしゃくしゃにかき乱した。
「ここは安全だから」
…そう言われても、とても信じられはしない。三杉くんの魔法、の効果があったとすれば、僕の心に対してだろう。僕はすっかり疲れてしまっていた。だから、匿ってくれる事はありがたい。僕は息をついた。
「飲むか?」
差し出されたのはミルクティーだった。自分はコーヒー党のくせに、僕の為に紅茶を置いておいてくれる辺りは確かに若林くんで、僕は手を伸ばして受け取った。
「…甘いよ」
「疲れている様子だったからさ、甘いだろ?」
どうして、こんなちっぽけなことが嬉しいんだろう。ミルクティーの温かさと甘さは涙腺直撃で、僕は慌てて話を逸らせた。…もう一つ気になっていたこと。
「ところで、僕はどうやって目が覚めたの?」
白雪姫の目覚めについては、いくつか説がある。従者がつまずいた、王子がつまずいた、重さに腹を立てた従者が殴った。…これかな?小次郎と若島津に殴られるのはぞっとしないけれど…例のあれ、よりはずっとマシかもしれない。
王子のキス。
アニメで普及して、白雪姫の定番となったんだけど…まさか、ね。視線を向けた僕に、若林くんはさりげなく顔を背けた。
「若林くん、もしかして、君も三杉くんの魔法で…」
「三杉の魔法で、どうこうなるくらいなら、ずっと我慢なんかできないって」
…何やら不穏当なことを聞いたような気がする。若林くんは赤くなった顔で、大声を出した。
「俺じゃない。信じてくれ」
「うん。信じるよ。どうしたの?」
真っ赤になって言い募る若林くんに、頷いて見せた。若林くんは、自分がしたことをごまかすような人じゃない。
「それが…お前があんまり可愛くて、起こせなくて見ている間に、ジョンがお前の顔をひとしきり舐めていったんだぁ!」
僕は部屋の隅に、しっかりと縛り付けられているジョンを見つけ、ひとしきり笑った。三杉くんの魔法ってすごいなあ。…使い方は間違っているけど。
「本当は俺が起こしてやりたかったんだぞ」
囁きながら僕の手を取る若林くんにも感心した。三杉くんの魔法なんか関係ない程、愛してくれているのだと思えば。
「僕も君に起こされたかったよ」
笑い返した僕に、うやうやしく口付けが与えられた。
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