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■ 真様小説 ■

2009.04.20 01:14 candy

「石乃湯サービスデー」

「岬、今度誕生日だろ?俺ん家に来いよ」
他の者の発言ならば、周囲の女生徒の嬌声に包まれる場面であるが、発言者が石崎である以上、何ら問題ない。練習後の部室、ロッカーに囲まれた狭い空間に、男っ気が満ちている。マネージャーのゆかりが入ってきたら、
「うわ~、男くさっ」
と言われるに違いない雰囲気である。
「じゃあ、今年もしょうぶ湯するんだね!」
石崎は石之湯の自称看板息子、対する岬は以前の常連である。今もアパートのボイラーの調子が悪い日など、普通に通っている。
「おう。だから来いよな。サービスするからよ」
「うん。行くよ」
ゴールデンウイークとは言っても、東邦学園に連敗中の南葛高校に休みはない。シードを獲得出来た分、練習することになった。そこで、石崎の台詞につながる。
「しょうぶ湯って何だ?お湯で対決とかするのか?」
そこで喙を挟んだのは来生である。期待を裏切らない天然ぶりに、元修哲トリオの井沢は頭を抱え、滝は嬉しそうだ。
「そうだぜ。風呂で競うっていうと…分かるだろ?」
ぶはっと横で吹き出した森崎に、高杉がとりなす。
「昔からの風習で、端午の節句に菖蒲を風呂に入れるんだろ」
「ああ、そうだ。うちの銭湯は毎年やるんだぜ」
「くそっ、一、まただましたのかよ」
「へへん、だまされる方が悪いっての」
「…信じたんだ、来生…」
滝と来生の相変わらずの漫才に、森崎が付き合いよく笑っているのを尻目に、石崎が講釈を始める。
「菖蒲ってのは薬草だからな。身体にも良いし、しょうぶって響きが端午の節句にも合ってるんで、銭湯ではこどもの日に菖蒲湯するんだ」
「へえ」
「おっ、石崎、たまには風呂屋の息子らしいこと言うじゃねえか」
自身も豆腐屋の跡取りである浦辺の賞賛は説得力に満ち溢れている。
「そうなんだ…銭湯って行った事ないから知らなかったぜ」
「って、哲兵はそれ以前の問題だろうが」
下町風情漂う他校出身者に比して、私立修哲小出身の面々はさすがにお坊ちゃまだけのことはある。
当の岬はにこにこしながら、周囲のやりとりを見守っていた。こうして、友達同士が気のおけない会話をする、という光景が岬は大好きだった。他愛のない日常の会話なのに、しみじみと幸せを感じる。
「じゃあちょうど良いからさ、行こうぜ」
「へへ、そうしろよ。いつもより早く、3時に開けるからよ」
「へえ…じゃあ、練習後にそのまま行っても良いな」
来生はそう言うが、お風呂用具持参で練習に来る面々を想像して、岬はくすくすと笑い声を立てる。
「何がおかしいんだよ」
ふくれる来生をよそに、井沢は周囲を見渡した。
「じゃあ、それで決まり、な。練習終わったら、石乃湯に直行しようぜ」
「そうそう、それからバーガー屋に寄って、岬の誕生日会な」
「え?」
さりげなく付け足された言葉に、岬が驚いたように聞き返す。
「あーっ!哲兵ばらすなよ」
「悪ぃ」
一斉に集中砲火を浴びる来生に、こんなにたくさんで計画してくれていたのか、と岬は嬉しくなってしまう。
「みんな、ね、落ち着いて」
周囲を止める口調にさえ、嬉しさが滲み出る。
「せっかく驚かせてやろうと思ってたのによ」
石崎の言葉に、岬は首を振る。
「ううん。教えてくれて助かったよ。今も嬉しくて、すごくドキドキしてるのに…、当日だったら心臓止まりそう」
各地を転々としてきた岬にとって、GWはたいてい移動日だった。誕生日とて例外ではなく、友達に祝って貰うことなど夢のまた夢。それが、計画まで立てて、揃ってお祝いをしてくれるなんて。
「当たり前だろ、大事な岬の誕生日なんだぜ」
井沢の言葉に、岬は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、みんな」
きっとこの先、誕生日が来る度に、この光景を思い出してしまうに違いない。きっと騒いで周囲に迷惑をかける石乃湯占領やハンバーガー店でのドカ食いも。言葉にならない岬の頭を叩いた手も、もう誰のものとも分からなかった。

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